即興小説ログ「灰色の春」

 春が好きだった。  愛する草花が咲き乱れ、新生活に少し緊張した人々が街にあふれ、誰もが何かが始まると期待をする。そんな季節に生まれたことを、何度だって感謝した。  春が好きだった。  「……報告は以上だ」  そう言って真田が帽子の鍔を引いた様子を、気配だけで感じ取る。新しい練習メニューや新しい部員、みんながどんな風に練習に打ち込んでいるか、俺はずっと窓の外を見ながら聞いていた。  「順調そうじゃ…

お題「キスマーク」「友愛」「自傷」

 「ときどき頭の中でゴォーーーって音がして、何もわからなくなるんすよ」  薄暗い部室、蛍光灯を跳ね返すトロフィーたちの輝きがたまに呪いみたいに見える、なんて言っていたのは誰だったろう。うずくまって震える赤也の声は変なふうに反響して耳がおかしくなったのかと思う。ほらときどきあるだろう、夜の病室で誰の声もしない静寂なんてどうだい?  「人が傷ついてるか、自分なのか、それだけの話っす」  だったら自分の…